車のCMなどでよく耳にする「SUV」や「ハイブリッド」といった言葉について、あなたはその意味をどのくらい知っているでしょうか。実はこれらの言葉は車の「種類」を表すものであり、その定義や特色を知ることは、車を選ぶ際の大きなヒントになります。そこで当記事では、車の具体的な種類やその分け方、用途に応じて注目すべきポイントを紹介します。
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1.車はいくつかの種類に分けられる
車は形状や内部の仕組みといった特徴によって、さまざまな種類に分けることができます。また種類によって、強みや得意とする使い方にも一定の傾向が存在します。そのため、数ある車の中から自分に合った1台を見つける上では、車の大まかな種類を把握することがひとつの近道です。
たとえば、車の種類の中にはスピードや燃費に優れた種類、より多くの人や荷物が載せられる種類、環境への負荷が少ない種類などがあります。それらの中から目的に合った種類の車のみを探すことで、すべての車を比較せずとも最適な車を見つけ出すことができるのです。
2.車の種類を分ける特徴
車の種類は、以下の3つの特徴によって分けることができます。
ボディタイプ
ボディタイプとは車そのものの形状や構造、サイズのことです。車の中はエンジンルーム・客室・荷室という三つの空間で構成されており、各空間が分けられているか、あるいは一体になっているかといった違いもボディタイプを区別するポイントになります。
また、ボディタイプは車のデザインだけでなく、性能や使い勝手にも影響を及ぼします。たとえば、大型のボディタイプであれば乗員数や載せられる荷物の量が多く、小さめのものは運転のしやすさや燃費性能に優れている傾向にあります。
エンジン(動力源)
車が走るための力を生み出すエンジンは、車の走行性能に直結する重要な部品のひとつです。具体的には、燃費(同じ燃料で走れる距離)や加速力などを左右します。
ちなみに、車には旧来のガソリン・軽油を燃料とするエンジンで走るものの他、電気でモーターを動かして走るものや、複数の動力を組み合わせたものもあります。これらの化石燃料以外を動力源とする車は、環境へ与える負荷の小ささなどから近年大きな注目を集めています。
駆動方式
エンジンで生まれた力を、タイヤへ伝える方法のことを駆動方式と呼びます。駆動方式は四輪すべてに力を伝える4DWと、前後いずれかの二輪だけに力を伝える2WDの大きく二つに分けられます。
力を伝えるタイヤの数は、基本的に多いほど不整地の走行に強く、逆に少ないほど燃費の良さにつながります。そのため、中には4WDと2WDを自在に切り替えられる方式も存在します。
3.ボディタイプの種類
セダン
セダンとは、エンジンルームと客室、荷室という三つの空間がそれぞれ区切られている構造の車を指します。こうした構造は3ボックスとも呼ばれ、ボディの強度や静粛性の高さが強みです。
また、セダンは重心が低めにとられており、走行時の安全性や運転のしやすさにも優れている傾向にあります。ドアの数は4ドアが一般的であり、乗り降りもスムーズに行なえます。
ワゴン(ステーションワゴン)
セダンの三つの空間のうち、客席と荷室の区切りをなくして2ボックスにし、荷室をより広くした車をワゴンといいます。車体後部がふくらんだ箱型になっているのが特徴です。
載せられる荷物が多いのはもちろんのこと、荷室に積んだものを客室からでも取り出すことができるため、大きな買い物や旅行などに適したボディタイプといえるでしょう。
ワンボックスカー
ワンボックスカーの強みは、その名の通り各空間が一体となった1ボックス構造をとっており、区切りがない広々とした客室と荷室を有している点にあります。車体の形状としては、エンジンがボンネット内ではなく客室の下にあるため、綺麗な四角形に近いデザインをしています。
多くの乗員や荷物を載せられることから、ワンボックスカーは自家用車よりも商用車や送迎車などに使われることが多いです。運転感覚も乗用車よりはトラックに近く、運転には慣れが必要です。
ミニバン
6~8名と多めの乗員数を確保しつつも、ワンボックスカーと比較して車体が小さく、エンジンがボンネット内にある2ボックス車はミニバンと呼ばれます。座席は3列仕様で、乗り降りがしやすいようにスライド式のドアを採用しているものも多く見られます。
一般的な乗用車としては大きめのサイズではありますが、自家用車としても使いやすいように設計されており、ファミリーカーとして高い人気を誇ります。荷物もたくさん載せられるため、キャンプやスキーといった道具の多いレジャーの際も便利です。
コンパクトカー(ハッチバック)
2ボックスの普通自動車の中でもボディが小さく、ドアがスライドして開閉する「ハッチバック式」を採用している車のことをコンパクトカーといいます。ただし、メーカーによってはドアの方式のみに着目して「ハッチバック」というボディタイプとして扱われることもあります。
小回りが利き、燃費に優れたモデルが多いことから、免許を取って間もない方がはじめて運転する車にも適しています。また、2ボックスのため荷物の出し入れがしやすい点も魅力です。
SUV
SUVとはSports Utility Vehicleの略であり、車高が高めに設計された高い走行性能を誇る2ボックス車のことを指します。悪路も難なく走破できるため、アウトドアに向いています。
ちなみに、SUVの中でも市街地にも対応しているものはクロスオーバーSUV、より不整地に特化した無骨なものはクロスカントリーSUVと呼ばれます。特に、クロスオーバーSUVは近年普段使いにも適したコンパクトでスタイリッシュなデザインのモデルが増えています。
クーペ
高い走行性能とデザイン性が魅力の、いわゆるスポーツカーのことです。優れたスピードや加速力を誇る一方、車としては利便性よりも「走る楽しさ」を重視しており、車高は低めで乗員は2~4名、2ドアのものが多い傾向にあります。
また、屋根を外して開放感を楽しめるオープンカーも多くはクーペに含まれます。中でも、ベース車があるタイプのオープンカーはカブリオレやコンバーチブルと呼ばれ、これらは屋根を取り付けて乗ることも想定しているため実用性も高めです。
軽自動車
軽自動車は法律で定められた、小型車における日本独自の区分です。税金や保険料が優遇されており、本体価格や維持費が手頃で所有しやすいのが魅力です。
その代わり、車体サイズは全長3.4m以下×全幅1.48m以下×全高2m以下、総排気量は660cc以下、定員は大人4名以下と軽自動車には厳密な条件があります。とはいえ、サイズ以外の形状に関する規定はなく、中にはワゴンやSUVに相当する特徴を持つモデルもあるなど選択肢は豊富です。
その他
これまで紹介してきた乗用車に適したボディタイプの他にも、車には用途に応じたさまざまなボディタイプが存在します。荷物の運搬に特化したトラックや、宿泊に適した設備を持つキャンピングカーなどがその代表例です。
中でも、小型のトラックは近年レジャーなどでも活用されるケースが増えており、自家用車としての人気が高まっています。目的に合致するのであれば、これらの特殊なボディタイプを選択肢に入れてみるのもよいでしょう。
4.エンジン(動力源)の種類
ガソリン車
化石燃料のガソリンを燃料として動くエンジンを搭載した車です。現状最も普及しているエンジンの方式のため価格が低く、高速域からの優れた加速性と安定性が強みです。
また、ガソリンには異常燃焼を防ぐ「オクタン価」の異なるレギュラーとハイオクの二種類があります。ハイオクはオクタン価が高いため出力が大きく排気量の多い車に適しているものの、レギュラーと比較して値段も高めです。
ディーゼル車
ディーゼル車の特徴は、ガソリンとは性質の異なる軽油を燃料とする点です。ディーゼルエンジンは回転数が少ない状態でも前に進む力が強く、大きな荷物の運搬や悪路の走行にも適しています。
また、軽油はガソリンと比べて価格も安価であり、税制面でも優遇されています。とはいえ、現状ディーゼルエンジンが採用されている乗用車は海外製の高級車が多く、日本ではあまり普及していません。
ハイブリッド車
ガソリンや軽油といった化石燃料で動くエンジンと、電気で動くモーターを組み合わせて走る車をハイブリッド車と呼びます。エンジンの力でモーターを動かす「シリーズ式」や、メインの動力源であるエンジンをモーターで補助する「パラレル式」などその仕組みはさまざまです。
また、近年では一般的なハイブリッドの他に、外部から充電ができるPHEVと呼ばれる方式も増加傾向にあります。いずれのハイブリッド車もモーターを用いる分、エンジンだけの車と比較して燃費や静粛性に優れたものが多く、二酸化炭素の排出量も少ないため税制でも優遇されています。
電気自動車
電気自動車は燃料タンクの代わりに大型のバッテリーを積んでおり、PHEV同様自宅や街の電気スタンドから供給された電気でモーターを動かして走ります。ハイブリッド以上の環境性能や静粛性に加えて、モーターならではのスムーズな加速や減速が強みです。
ただし、電気自動車は電気以外で動くことはできず、現状では充電時間の長さや一度に走れる距離の短さにも課題を抱えています。主に市街地での短距離の移動に適した車といえるでしょう。
燃料電池自動車
FCVやフューエルセルとも呼ばれる、今後さらなる普及が期待されている新しい技術を搭載した車です。その特徴は、水素などを用いた燃料電池でモーターを動かして走行する点にあります。
燃料電池は水素と酸素を化合させるエネルギーで発電するため、どれだけ走行しても排出するのは水だけであり、高い環境性能を誇ります。また、モーターのみで走るため静粛性も高く、燃料の充填時間が電気自動車の充電より短いのも利点です。
5.駆動方式の種類
2WD
前後いずれか二輪に力を伝えて動く2WDは、エンジンの位置と動かすタイヤによってさらに細かな種類に分けられます。中でも最も一般的な「FF」は、車体前方のエンジンで前輪を動かすためパーツが一ヶ所に集中しており、車内空間を広めにしやすく軽量で製造コストも低いのが魅力です。
その他、後輪に力を伝える方式にはエンジンが車体前方にある「FR」、エンジンが車体中央にある「MR」、エンジンが車体後方にある「RR」といった種類が存在しています。いずれも二輪のみを駆動させて走るため、燃料消費を抑えられる点が強みです。
4WD
4WDは四つのタイヤすべてに力を伝える方式であり、AWD(全輪駆動)とも呼ばれます。エンジンのパワーを地面に伝えるタイヤが多い分、悪路での走破性やコーナリング性能に優れています。
また、4WDには常に四輪で駆動する「フルタイム式」の他に、燃費や運転のしやすさに配慮して二輪での駆動に切り替えられる機能を持ったものもあります。中でも、近年普及が進んでいる「トルクスプリット式」は、状況を判断して4WDと2WDを自動で使い分けることが可能です。
6.選び方のポイント
通勤・買い物が中心なら燃費と小回りを重視
市街地での短い距離の移動にしか車を使わない場合は、小回りが利き、燃費性能にも優れた2WDのコンパクトカーや軽自動車がおすすめです。近隣に充電スタンドがあれば、電気自動車やPHEVも選択肢に入ります。
長距離ドライブを楽しむなら走行性能に注目
海や山でのレジャーや遠方への旅行には、悪路でも安定して走行できる4WDのSUVが向いています。エンジンは長距離の移動に適したガソリンやディーゼル、ハイブリッドが望ましいでしょう。
家族が増えたら客室や荷室の広さも重要に
子どもが多い家庭であれば、よりたくさんの乗員や荷物を載せられるワゴンやミニバンといったボディタイプが便利です。荷物の積み下ろしのしやすさという点でも2ボックスタイプが適しています。
環境性能で選ぶなら動力源の種類をチェック
なるべく環境への負荷が小さい車に乗りたいという場合には、モーターを用いる分二酸化炭素の排出量が少ないハイブリッド車や電気自動車を選びましょう。これらのタイプは税制面でも優遇されている他、モデルによっては外部への給電も行なえるため災害時などにも役立ちます。
7.監修コメント
自動車の種類を表す言葉に「車種」があります。もっとも多く使われるのは「ワゴン」や「セダン」といったボディタイプの違いを表すときですが、メーカーの公式サイトを見ても分かる通り、「車名」という意味においても「車種」と記載されることがあります。
他にも「普通車」や「中型車」といった区分においても「車種」という言葉が使われます。何かの申請をするときなどに「車種」とあった場合は、どれを指しているのかを確認してから記載するとよいでしょう。