1台の車を会員間でシェアするカーシェアリングサービスの利用が近年増加しています。公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団の2025年3月の調査によると、国内のカーシェアリング車両ステーション数は右肩上がりに伸びており、同調査時点では3万1,235ヵ所にのぼります。会員数は560万2,120人と、多くの方がカーシェアリングサービスを利用している状況です。これから利用を検討している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、これからカーシェアリングを利用したい方、利用するサービスの乗り換えなどを検討している方に向け、カーシェアリングの利用方法やサービスの内容、利用頻度などに応じたおすすめのサービスの特徴について解説します。
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1. カーシェアリングとは?
カーシェアリングとは、シェアリング登録する会員間で車を貸し借りするサービスのことです。レンタカーと比較して短時間・短距離でも低コストで利用できるサービスが多いことから、普段使いでの利用のハードルが低いという特徴があります。
カーシェアリングのサービスはスイスが起源といわれており、日本では2010年頃から利用が拡大し始めました。車の購入や維持に費用をかけずに車を利用できるカーシェアリングサービスは、コストを抑えて車を使いたい方、駐車場などの問題で車を所有できない方にも注目されています。
2. カーシェアリングの仕組み
カーシェアリングサービスは、大きく分けてレンタカーや車両販売事業などを行う企業が車の提供と管理を行うものと、個人間のカーシェアリングをサポートするサービスの2つがあります。
ここでは、企業によるカーシェアリングについて説明します。
カーシェアリングを利用するときの流れは以下の通りです。
- 会員登録をする
- 利用予約を行う
- 予約日に車両ステーションに行き、車を利用する
- 利用後、車両ステーションに返却する
カーシェアリングを利用するためには、車の管理を行っているカーシェアリングサービスに会員登録を行う必要があります。入会手続きは、説明会つきの対面入会やインターネット入会などサービスによりさまざまです。このとき、料金の支払いに利用するクレジットカードや運転免許証の提示を求められるため、対面入会の場合は忘れずに持参しましょう。
会員登録が完了後、車を使いたいときには、インターネットやスマートフォンアプリから利用予約を行います。予約日時になったら、予約した車が置いてある車両ステーションにて、会員カードやICカードで解錠し利用を開始しましょう。車のキーが置かれている場所は利用するサービスによって異なるため、事前にホームページなどで確認しておきましょう。
利用後は車両ステーションに車を停め、車のキーを指定の場所に戻し、解錠に使用したカードで施錠します。
カーシェアリングの車の種類
カーシェアリングでは、インターネット上で利用する車種を選ぶことができます。軽自動車やコンパクトカーが中心ですが、車両ステーションによってはSUVやミニバン、大型車といった車種が用意されていることもあります。
ガソリンの給油や洗車は不要
カーシェアリングの場合、戻す前の洗車や給油は必須ではないことがほとんどで、これらは利用料金に含まれているのが一般的です。
車体・車内の汚れが気になるとき、利用中にガソリンが減り給油の必要があるときには、車内に備えられた給油カードなどカーシェアリングサービスが指定する方法で給油します。
給油の目安は利用するサービスによって異なり、ゲージの半分以下、あるいは3分の1以下を給油の基準としているケースが多いです。
3. カーシェアリングの料金の仕組み
ここからは、カーシェアリングサービスを利用する際にかかる主な料金をご紹介します。カーシェアリングサービスの料金体系はサービスによって異なるため、利用前には料金体系を事前に確認しておきましょう。
初期費用
カーシェアリングの初期費用としてかかるのは、入会金や、車の開錠・施錠のためのカード発行手数料です。入会金に関しては無料のところが多いです。カード発行手数料の相場は1,000~1,500円程度ですが、専用アプリや自身で所有しているSuicaなどを使用する場合は、カード発行手数料が無料になることもあります。
月額料金
月額料金制のサービスと、月額料金が発生しないサービスの2タイプがあります。月額料金制のサービスでは、利用の有無にかかわらず、毎月料金が発生します。月額料金はサービスによって幅がありますが、数百円~2,000円程度が相場です。月額料金がかかる代わりに、時間料金や距離料金が安くなったり、月額分の割引を受けられるサービスがあります。
時間料金
利用時間に応じた加算料金です。時間料金は、一定時間経過ごとに加算されるものと、6時間パックなどまとまった時間で料金が設定されているものがあります。
距離料金
走行距離に応じた加算料金です。距離料金は、利用時間にかかわらず一定距離ごとに料金が加算されるもものと、一定時間までは距離料金が加算されないものがあります。前者の場合、走行距離1kmあたりに対して10~20円程度が相場です。
どのタイプを利用すればいいの?
このようにさまざまな料金タイプがあるため、どのサービスを利用すればいいのか迷ってしまう方も多いでしょう。カーシェアリングの利用を検討している方は、次のポイントを目安にサービスを選定することをおすすめします。
①利用頻度が少なく、利用時間・距離も短い
月に1回、あるいは数回で短時間・短距離の利用を検討している方は、月額料金が無料で時間と距離に応じた料金が発生するタイプのサービスが向いています。
②利用頻度が多いが、利用時間・距離は短い
利用頻度は多くなるものの、短時間・短距離の利用を検討している方は、月額料金タイプのサービスが向いています。月額分の割引を受けられるなどのメリットを有効活用することで、上記①のケースよりお得に利用できるケースがあります。
③利用頻度は少ないが、利用時間・距離は長い
利用頻度は少ないものの、長時間・長距離の利用を検討している方は、月額料金がなく、6時間などの時間パックがあるサービスが向いています。
このようにご自身の利用頻度や利用時間・距離に合ったサービスを選択することで、費用を抑えられる可能性があります。
5. カーシェアリングのメリットとデメリット
カーシェアリングはとても便利なサービスですが、多くの利点がある一方で、利用する際には注意したいデメリットもいくつかあります。どのようなメリット・デメリットがあるのか詳しく見ていきましょう。
カーシェアリングのメリット
カーシェアリングの主なメリットは次の通りです。
- いつでも気軽に利用できる
- 車の維持費がかからない
- 短時間でも利用できる
- 直前でも予約・キャンセルできる
- レンタカーと比較して料金が安い傾向にある
カーシェアリングは、なるべく費用を抑えながら日常的に車を利用できるサービスです。
車の利用時間・頻度が少ない方、少なくなる予定の方は、カーシェアリングを活用することで、利用料金だけでいつでも好きなときに車を利用できるようになります。
カーシェアリングのデメリット
このようなメリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 車が貸し出し中のときには利用できない
- レンタカーのように返却の都度清掃されない
- 乗り捨てできない
- 身近に車両ステーションがないと利用しづらい
- 利用時間が長くなるとレンタカーより割高になることがある
- 固定費(月額費用)がかかる
車を複数の会員間でシェアをする性質上、車が貸し出し中で利用できないこともあります。また、レンタカーのように返却の都度清掃されないため、汚れが気になるときがあるかもしれません。
身近に車両ステーションがないと日常使いには不便なこともあるでしょう。利用時間や距離が長くなると、レンタカー料金より割高になってしまいます。行き先で乗り捨てもできないため、長時間・長距離の利用を検討している方は、レンタカー料金と比較してから利用することをおすすめします。
4. カーシェアリングとレンタカー、マイカーの違いは?
カーシェアリングと似たサービスに、レンタカーがあります。しかし、カーシェアリングとレンタカーは仕組みや料金、利用方法など異なる点が多々あります。また、車を利用するには、マイカーを持つという選択肢もあります。ここでは、カーシェアリング・レンタカー・マイカーの違いを紹介します。
カーシェアリング | レンタカー | マイカー | |
---|---|---|---|
初期費用 | 0〜1,500円程度 | なし | 100万〜300万円(本体価格+法定費用等) |
維持費 | 月額料金数百円~2,000円程度 | なし | 月間約2〜3万円(自動車税、自動車重量税、自賠責保険料、メンテナンス費用等) |
利用料金 | 200円程度/15分 | 5,000円程度/6時間+返却時のガソリン代 | - |
自動車保険 | 無料(利用料金に含まれている) ※免責補償も含まれていることが多い |
無料(利用料金に含まれている) ※免責補償はオプションでの任意加入で1,100円程度/24時間 |
月間約6,000円 |
利用時間 | 15~30分単位 | 6時間〜 | - |
貸出場所 | 車両ステーション | レンタカー営業所 | - |
予約方法 | インターネット・アプリ/即時 | 事前予約が必要 | - |
貸出・返却時間 | 24時間 | レンタカー営業所の営業時間内 | - |
※上記の料金はあくまで一例です。
※免責補償とは、事故を起こした際に、免責金額(保険の一部を自己負担する費用)を免除する制度。
カーシェアリングとレンタカーの違い
レンタカーでは、一般的に会員登録が必要なく乗り捨てサービスも用意されていますが、ごく短時間の利用でもまとまった時間でレンタルしなければなりません。ガソリン満タンでの返却が求められることもあるため、短時間の利用ではカーシェアリングと比較してコスト高になりがちです。
一方、カーシェアでは短時間でも費用を抑えて車を利用でき、サービスによっては数分前のキャンセルも可能です。しかし、会員登録が必要で月額料金が発生することもあります。また。車は必ずはじめに停車してあった車両ステーションに戻す必要があるため、出かけ先の車両ステーションなどに乗り捨てることはできません。
レンタカーは、長期間・長時間車を利用する必要がある方、出張や旅行など出先で車が必要な方に向いているサービスです。カーシェアは、車を気軽に普段使いしたい方に向いています。
カーシェアリングとマイカーの違い
カーシェアリングとマイカーの違いの一つは、初期費用や維持費です。マイカーを持つとなると、最初に数百万円のまとまったお金が必要になります。また、毎年支払う必要のある自動車税や、数年ごとに受ける車検費用、日常のメンテナンス費用など、維持費もかかります。カーシェアリングは、都度、利用料金を支払う費用はありますが、初期費用や維持費はかかりません。
一方で、マイカーはいつでも使いたいときに車を使えるのがメリットです。また、荷物を車に置いたままにしたり、カスタマイズしたりするなど、自由に車を使えるのも魅力でしょう。
カーシェアリングは、他のサービス利用者と車を共有しているため、予約で埋まっている場合は車を利用できなかったり、自由にカスタマイズすることはできません。
6. カーシェアリング利用時の注意点
カーシェアリングで車を利用する前に、まずは出発前点検を行います。車に異常がないか、次のチェックリストを参考に確認してください。
車の日常点検チェックリスト
- タイヤに亀裂・裂傷はないか
- タイヤの溝の深さは1.6mm以上か
- ランプ類は正常に点灯するか
- エンジンがスムーズにかかるか
- エンジンに異音がないか
- ウォッシャー液が出るか
- ワイパーがきれいにウォッシャー液を拭き取るか
- ブレーキが効くか
カーシェアリングを実際に利用するときには、以下の点に注意しましょう。禁止事項はサービスによって異なることもあるので、あらかじめホームページなどで注意点を確認しておくことも重要です。
- 会員以外が運転しない
- 車内で喫煙しない(禁煙の場合)
- 予約利用時間内に車を返却する
- ゴミは持ち帰る
- 灯油の積載やペットの同乗は避ける
もし事故を起こしてしまった場合は、すぐに利用しているサービス会社に連絡をしてください。また、負傷者がいる場合は救護を行い、救急車を呼ぶ、警察に報告するなど、必要な措置をとりましょう。
7. 監修コメント
いつも同じステーションや車を利用しているのならあまり気にする必要はありませんが、カーシェアリングでは初めて運転するモデルを借りることになる時も多くあります。車名は同じでも、年式やグレードによって仕様が異なることもあります。
レンタカーの場合は有人の店舗で説明を受けられますが、カーシェアリングでは基本的にできません。予約時に利用する車を確認できるので、運転したことがないモデルを借りる場合は、メーカーの公式サイトなどで操作方法を調べておきましょう。
事前に使用するまでの手順や注意点をきちんと理解して、安全にカーシェアを利用しましょう。