普段何気なく使っている車のエアコンですが、A/Cスイッチの意味や効率的な使い方など、知らないことも多いもの。当記事では、車のエアコンの仕組みから基本的な使い方、燃費に良い使い方などを紹介します。
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1.車のエアコンの仕組み
家庭用エアコンと同様、車にも冷房と暖房の機能がついていますが、車の暖房は特有の仕組みで温かい風を作り出しています。ここでは、意外と知らない車のエアコンの仕組みについてご紹介します。
冷房の仕組み
冷房は、「液体が気体になる時に、周囲の熱を奪って冷たくなる」という性質を利用しています。車のエアコンをオンにすると、エアコンのシステム内部で冷媒と呼ばれるエアコンガスが循環します。この冷媒を、「気化→液化→気化」と変化させることによって、冷たい風を作り出しているのです。冷房の仕組みを簡単に説明すると、以下の通りです。
- 冷房をオンにすると、コンプレッサーが作動し、冷媒が圧縮される。
- 圧縮された冷媒は冷却され、液化する。
- 液状になった冷媒は霧吹きのように噴射され、気化する中で周囲の熱を奪う。
- 冷やされた風が車内に送られる。
なお、冷房システムの要ともいえるコンプレッサーを作動させると、エンジンの力や電力を消費するので、燃費が悪化する傾向にあります。
暖房の仕組み
家庭用のエアコンの暖房は、基本的に上記と反対の流れで温かい風を作り出します。しかし車の暖房は、「エンジンの熱」を利用して車内を温めるのです。車はエンジンをかけると、熱が発生し、どんどん温度が上昇します。このまま放置すると故障してしまうので、一般的にはラジエーター液という冷却水を使ってエンジンを冷やしています。
車の暖房は、エンジンを冷やしたラジエーター液にファンの風を当てることで温風を作り出しているのです。暖房は、車を稼働することで自然と発生するエンジンの熱を再利用しているため、燃費にはほぼ影響がありません。
2.エアコンのボタン・スイッチの種類と機能
車種によって機能やボタンの位置などが異なりますが、ここでは一般的に車に備わっているボタン・スイッチの種類と機能、操作方法についても紹介します。
A/Cスイッチ
A/CスイッチのA/Cとは、「エアコンディショニングシステム」という意味で、冷房・除湿機能のオン・オフを切り替えるスイッチです。A/Cスイッチをオンにすると、コンプレッサーが動き、冷房システムが作動するので、車内に冷たい風が送られます。一方、A/Cスイッチをオフにした場合、コンプレッサーが動かないため、冷たい風が出るのではなく、単に送風モードになります。
なお、「エアコンをつけているのに、風がぬるい」「冷房が効かない」といった場合、このA/Cスイッチがオンになっていないことがありますので、A/Cスイッチを一度確認してみましょう。
風量調整スイッチ
車内に送られる風量を調整するためのスイッチです。スイッチにはファンのマークが描かれており、マークの大小によって風量を調整できます。また左右に回すダイヤルタイプであれば、基本的に左に回せば風量が少なくなり、右に回せば風量が多くなります。そのほか、「+」「−」ボタンや上下を表すマークが描かれたボタン、液晶画面で操作するタイプなどもあります。
温度調整ダイヤル
車内の温度を調整するためのダイヤルです。風量調節ダイヤルと同じく、左右に回すタイプ、「+」「−」ボタン、上下を表すマークが描かれたボタン、液晶画面で操作するタイプなどがあります。
AUTOスイッチ
最近では、ほとんどの車でAUTOスイッチが備わっています。AUTOスイッチをオンにすると、「オートモード」になり、設定温度に応じて冷房・暖房、風量、吹き出し口、外気導入・内気循環の切り替えを自動で行ってくれます。ただし、AUTOスイッチをオンにしたとしても、温度設定は自身で行う必要があります。
OFFスイッチ
エアコンを停止するスイッチです。エアコンを止めたい時は、このスイッチを押さなければ止まらないので注意しましょう。
フロントデフロスタースイッチ
フロントデフロスタースイッチとは、フロントガラスの内側の曇りや結露を取り除くためのスイッチです。スイッチを押すとフロントガラスに向けて温風が吹き出し、曇りや結露を取り除きます。切りたい時は、もう一度スイッチを押しましょう。フロントデフロスタースイッチは「FRONT」と書かれていることもあれば、扇形のマーク+上向きの波型矢印が3本描かれていることもあります。
リヤデフォッガースイッチ
リヤ(リア)デフォッガースイッチとは、リヤ(リア)ガラスの内側の曇りや結露を取り除くためのスイッチです。フロントデフロスタースイッチとは仕組みが違い、リヤガラスに貼り付けられた電熱線に熱を通して温めることで、曇りや結露を取り除きます。リヤデフォッガースイッチの目印は、「REAR」という文字や、長方形のマーク+3本の波型矢印です。
吹き出し口切り替えスイッチ
エアコンの風が出る吹き出し口を切り替えることができるスイッチで、「MODEスイッチ」と言われることもあります。「上半身」「上半身+足元」「足元」「足元+フロントガラス(曇り取り)」と、風を送りたい場所を変えることができます。
外気導入スイッチ
外気導入スイッチとは、外気を車内に取り入れるスイッチです。スイッチをオンにすると、車外の新鮮な空気を車内に取り込み、車内のこもった空気を車外に送り出すことができます。
内気循環スイッチ
内気循環スイッチとは、車内の空気を循環させるスイッチです。車外からの空気を遮断し、車内だけで空気を循環させて風を送る機能です。車種によっては外気導入スイッチがなく、内気循環スイッチのみ備わっていることがあります。その場合、内気循環スイッチのランプが点灯していれば「内気循環モード」、消灯していれば「外気導入モード」ということになります。
なお、長時間内気循環にしていると、車内の二酸化炭素濃度が高まり、眠気や頭痛を引き起こしたり、酸欠につながるリスクが高まります。そのため、一定時間内気循環を使用したら、換気を行うようにしましょう。
3.燃費にも良いエアコンの効率的な使い方
オートモードを使用する
オートモードは、設定した温度にするために、吹き出し口の切り替えや風量調節を自動で行ってくれます。手動で調整するよりは、AUTOスイッチをオンにして、オートモードを利用した方が効率良く設定温度を保ってくれるので、燃費が良くなる可能性が高いです。
状況に応じてA/Cスイッチのオン・オフを切り替える
A/Cスイッチをオンにすると、燃費が悪化しやすいので、状況に応じてこまめに切り替えることが大事です。基本的に冬場はA/Cスイッチはオフにしておき、窓ガラスの曇りを取りたい時だけオンにするといいでしょう。
また、夏場などの暑い車内では、最初からA/Cスイッチをつけるより、外気導入をして、車内の熱気をある程度逃してから、スイッチをオンにした方が燃費が良くなります。
外気導入と内気循環を使い分ける
外気導入と内気循環をうまく使い分けることで、燃費の悪化を防ぐことができます。まず、車のエアコンを使用している時には、「内気循環」にした方が燃費に良いです。一度温まった風・冷たくなった風を車内で循環させるので、設定温度を保つために効率が良いからです。
また、真夏の暑い車内に乗り込む時、冷房だけで一気に車内温度を下げようとすると、燃費が悪化します。そこでおすすめなのが、車の窓を全開にしてから、冷房+外気導入で走行をし、ある程度車内の熱気が外に逃げたところで、窓を閉め、内気循環に切り替える方法です。この方法であれば、燃費の悪化も抑えられますし、車内を素早く冷やすことができます。
定期的にエアコンフィルターを交換する
エアコンを使用すると、フィルターにホコリやゴミが溜まっていきます。すると、十分な風を送れなくなり、燃費が悪くなる可能性があります。また、エアコンフィルターはカビが発生しやすいので、異臭の原因になることも。交換の目安としては、「年に1回」もしくは「走行距離1万km」といわれていますので、それをめどに交換するといいでしょう。
4.シチュエーション別・エアコン設定
ガラスの曇りを取りたい時
冬の寒い日や、雨の日などにガラスが曇って視界が悪くなってしまったことはないでしょうか。ガラスの曇りは、車内と車外の温度差が大きい時や車内の空気の水分量が多い時に発生しやすくなります。ガラスの曇りを取るには、いくつか方法があります。
一つは、外気導入を使用すること。車外の空気を車内に取り込み、車内温度を外気温に近づけることで、ガラスの曇りが解消されます。
二つ目は、A/Cスイッチをオンにする方法です。A/Cスイッチには除湿機能もあるので、ガラスの曇りを取る効果があります。
三つ目は、曇り・結露除去専用に備わっている機能であるフロントデフロスター、リヤデフォッガーを使用すること。しかし、フロントデフロスター、リヤデフォッガーはガラスの内側の曇りのみに有効です。フロントガラスの内側に結露ができやすい寒い日や雨の日であれば良いですが、フロントガラスの外側に結露ができやすい夏場には、外気導入やA/Cスイッチを利用するようにしましょう。
車内の換気をしたい時
車内の空気がこもった時や、車内の匂いが気になる時など、換気をしたい時には外気導入を使用しましょう。外の新鮮な空気を取り入れることで、車内の酸素不足を防ぐ効果もあります。
車外の匂いが気になる時
渋滞にはまったり、トンネルの中や大型のディーゼル車の後ろを走行していたりすると、外気の汚れや匂いが気になる時があります。このような場合には、内気循環を使用すると良いです。車内だけで空気を循環させるので、車外の空気が車内に侵入するのを防ぐことができます。