HOW TO EV VOICEでは、『おとなの自動車保険』会員を中心に多くのマイカー所有者の声を集めるための口コミアンケートを定期的に実施しています。
第2回のアンケートは2025年2月に実施しました。EVオーナーだけでなく、様々な車種のオーナーにもEVカーライフについてどのように思っているか、このアンケートをもとに、EVカーライフの先輩の回答を分析しつつ、シリーズでクルマオーナーの声を紹介していきます。
さて、第9回のテーマはEVでの旅行はどれだけ快適なのか? 事前にどんな準備をしているか、電欠を回避する方法など、長期の休暇で旅行や帰省をする方々の実情が、今回実施したアンケートから浮かび上がってきたので、実際のオーナーたちのコメントとともにその実情をご紹介します。
300km未満の手軽なドライブ旅行をエンジョイ


まず、BEVオーナーとPHEVオーナーはどのくらいの頻度で旅行・帰省をするのでしょうか。年に1回程度行く方がBEVで20%、PHEVで26%、年に2回程度行く方がBEV 16%、PHEV 24%、年に3〜4回程度行く方がBEV 17%、PHEV 19%、それ以上の頻度で行く方がBEV 9%、PHEV 14%となりました。平均してみると結果的にPHEVオーナーの方がBEVオーナーの方々より旅行をしているという結果になっています。
ただしBEVオーナーの車種を見てみると、多い順に日産『リーフ』が33%で全体の約3分の1。日産『サクラ』と三菱『eKクロスEV』があわせて20%で5分の1を占め、テスラ『モデル3』と『モデルY』があわせて10%でした。
日産サクラと三菱eKクロスEVは“軽EV”と呼ばれ、一般的な航続距離が100~140km程度と、日常使いのEVに位置づけられています。特に寒冷地や高速道路走行ではさらに短くなる可能性があることから、旅行に利用するのはなかなか難しいと考えられます。
日産リーフは現行の「リーフe+」で航続距離が400km以上あり、テスラと同等です。それだけの距離を走ることができれば、無充電で片道200km程度、東京〜軽井沢間の距離が約180km、東京〜那須塩原間が約190km、東京〜富士吉田間が約100kmなので、最悪の事態を考慮してもこの程度の旅行は可能です。
実際「1泊以上の旅行・帰省で行くもっとも遠い距離は?」という質問では、もっとも多かったのが、片道200~300km未満で、BEVオーナーが30%、対してPHEVオーナーが22%でした。PHEVオーナーは片道100~200km未満も同じ22%で、BEVオーナーは23%と同程度、4割以上の方が最長でも300km未満の手軽なドライブ旅行を楽しんでいる様子がうかがえます。
そのほかでは、片道300~400km未満がBEV 16%に対してPHEV 17%、片道400~500km未満がBEV 8%に対してPHEV 3%、片道500km以上がBEV 15%に対してPHEV 33%でした。片道500km以上というBEVオーナーが約15%もおり、10人に1人以上は長距離ドライブ旅行も楽しんでいるようです。


高出力の充電器と複数のスポットをチェック
その旅行の際、BEVやPHEVオーナーはクルマの充電に関連してどのような準備をし、また事前にどのようなことを調べて行くのでしょうか?
まず、BEVオーナーですが、目的地までの距離によって調べることが違ってきます。私もそうなのですが、短距離では目的地での充電設備の場所、長距離では経路充電ができる場所を調べます。アンケートの回答でも「充電スポットの下調べは必須」、「必ず充電ステーションを探してから出かける」とのコメントが多数見受けられました。また、そのなかでも充電器の出力(kW)を重視する方も多く「150kW出力の充電器の場所」や「90kW出力で充電できる場所の確認」と、高出力の充電器を積極的に探す傾向がありました。
さらに“複数の代替プランを用意”するのも“常識”なのでしょうか。1か所の目的地で2から3か所の充電スポットをピックアップ」、「故障で充電できないところや混んでいて使えなかった場合に備えて複数の充電箇所を調べておく」、「すべての旅程に合わせて複数の充電アプリなどから充電スポットを徹底的に調べ上げてバックアップ」というコメントが多数ありました。
また、テスラでは独自の充電設備「スーパーチャージャー(SC)」を日本各地に整備しています。そのためほかのメーカーのEVより多くの充電設備を利用できます。しかし、高速道路のSA/PAにはCHAdeMO充電器しか設置されていないため、経路充電の場合、いったん高速道路から出る必要があり、その点に不満を持っているドライバーもいました。
これらのBEVオーナーに対して、PHEVオーナーは外出先での充電依存度がほぼなく、「PHEVなので遠距離の場合は充電設備は気にしません」、「走りながら充電できるので気にしない」、「ガソリンでも走るので、外部充電はしていません」と、ゆったりとドライブを楽しんでいるようです。
92.7%が電欠経験なし! 回避のコツは?

前述したように、BEVオーナーは旅行の際の充電では充電器の出力を気にかけていましたが、日常、自宅以外で充電する際に気をつけていることや気にかけていることはどのようなことでしょうか?
もっとも多かったのが、“充電スピード”で60%の方々が気にしているようです。次に“料金”で53%、“充電出力”が33%と続きました。ほかにも充電の際、気にかけていることは「故障中の充電器」、「空き状況」、「ついでになにかできる場所があるか」、「充電待ちの時間」、「充電器メーカー」、「充電はワーゲングループにしている」、「出先への移動の経路上に充電器があるか」、「コンビニなどがあるか」、「充電中の過ごし方」、「混み具合」、「テスラの急速充電しか使わない」などと人それぞれに気にかけていることがあるようです。
さて、それだけ気を付けているのであれば、いわゆるガス欠ならぬ“電欠”になることはないのでしょうか? その点を質問すると、実に93%の人が「ない」と回答。さすがです!

皆さん「こまめな充電」を心掛けており、「毎日充電すること」、「毎晩充電する」と、充電を日常的な習慣にしています。充電タイミングについては「20%以下になったらすぐ充電する」、「30%を切る前に充電する」など、一定のルールを設けている人が多いようです。
BEVユーザーは、走行中「走行可能距離の把握」、「常に電気残量を気にしている」という基本的な意識を持つことで電欠を防いでいます。長距離移動に関しては「遠くに出かけない」という方もいますが、「あらかじめ充電の計画を立てる」、「走行前に充電スポットを確認している」など、事前準備を徹底する人も多く見られました。「遠出するときは必ず満充電にする」、「ギリギリの運行計画を立てない」、「余裕を持ったドライブスケジュール」という全体的な姿勢や、「エアコンをこまめにOFFにすること」といった省エネ運転の工夫もあります。
「常にデータを見ていれば電欠しない」というように、経験を積んで自信を持っているユーザーもいれば、「ひやひやし続けて、安心しないことです」と常に意識し続ける姿勢を持つユーザーもいました。
しかしながら不本意にも“電欠”になった方々の体験談をまとめると、さまざまな状況で電欠が起きていることがわかります。「寒い日に家から1kmくらいのところで電欠し、押して帰った」という経験や、「往復100kmくらいのところに寒い日に行ったとき、帰りが危なくなりJAFに頼んだ」というケースがありました。中には「バッテリーの劣化で冬の気温が低い走行中に速度制限がかかり減速。そのまま電欠」した方もいます。現在のBEVは、バッテリー能力が落ちる寒い季節の運用は特に気を付けなければならないようです。今後の技術進化に期待したいものです。
充電施設に関する問題も多く、「充電施設への移動中にコンビニで寝てしまい、気が付いたら0%になっていた」、「山中の道の駅で充電器前の雪が除雪されておらず充電器までたどり着けなかった。そのため近くの村まで低速で向かう途中で電欠した」というケースがありました。また「パーキングエリアに充電施設がなかった」ために電欠した例や、「充電スタンドが故障していて使用できず、別の充電スタンドへ向かう途中で電欠」した方もいます。
特に高速道路での電欠は危険性が高く、「勾配が急だったので思った以上に電気を消費して途中で止まってしまい、ハザードをたきながら時速20kmでなんとかSAにたどり着いた」という恐怖体験もありました。初期の電気自動車では「航続距離が短く、比叡山ドライブウェイを登ったところ山上で残量ゼロになった」という例もありました。
充電施設の直前で電欠するケースも多く、「充電予定の販売店の手前500mで電欠」、「充電場所の100mぐらい手前で止まった」といったコメントもありました。多くの場合はJAFに救援を求めていますが、「連休中でJAFが来るまでに5時間くらい待った」という長時間の待機を強いられたケースもありました。
みなさん“電欠”になる予定もつもりもないのでしょうが、“電欠”とは予想もしていない事態が起こってしまってなるものだということがよくわかります。そうした事態に備え、電欠時にレッカー車で最寄りの充電スポットまで搬送するサービスが付帯されているロードサービス付き自動車保険やJAFなどのロードサービスに入会しておくことも考慮しておいた方がよいのかもしれません。
今回のアンケートで、PHEVユーザーは、いつでもガソリンで走ることができるという安心感で、“電欠”とは無縁のドライブ旅行を満喫していることがわかりました。一方、BEVユーザーも常に充電に意識を配ることで、その特徴でもあるBEVの快適なドライブフィーリングを楽しみながら、各自それぞれのドライブ旅行を楽しむことができているようです。
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【アンケート調査概要】
アンケート内容:お車に関するアンケート
調査対象:おとなの自動車保険契約者
総回答者数:2,412人
実施期間:2025年2月27日〜2025年3月3日

分析と声の紹介:田代真人さん
福岡県出身。九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。
その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にてWebマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て、起業。
出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動。現在は、桜美林大学非常勤講師など複数の大学で「コミュニケーション」「編集論」を教えている。そしてはじめてのEVとしてテスラ「モデルY」を2022年に購入し、EVカーライフを体験中。