HOW TO EV VOICEでは、『おとなの自動車保険』会員を中心に多くのマイカー所有者の声を集めるための口コミアンケートを定期的に実施しています。
第1回のアンケートは2024年6月の終わりから7月にかけて実施しました。EVオーナーだけでなく、様々な車種のオーナーにもEVカーライフについてどのように思っているか、このアンケートをもとに、EVカーライフの先輩の回答を分析しつつ、シリーズでクルマオーナーの声を紹介していきます。
さて、第7回のテーマは現在HEV(ハイブリッド車)のオーナーの中で、次はBEVの購入を考えているという方の心境を探ってみようと思います。
「環境に優しい」「これから主流に」、BEVへの期待
今回のアンケートでは、現在HEV(ハイブリッド車)オーナーのうち19%の方々が「次はBEVを検討したい」と回答しました。その理由やBEVについて知りたい情報について見てみるとわかるのが、HEVオーナーのBEVに対する期待と不安でした。

アンケートでは、BEVへの乗り換えを検討する理由として「環境にやさしい」、「環境への配慮」といった環境面での意見が最も多く、「カーボン・ニュートラルへの取り組みの必要性を感じている」、「自然エネルギーを活用して、より良い地球を残していきたい」など、具体的な環境保護への思いを語るコメントも目立ちました。
また、「時代の流れ」、「これから主流になる」といった、社会のトレンドを意識したコメントも数多く見られました。「世界的にEV熱がいったん冷めた感はありますが、バッテリーの問題さえブレイクスルーされれば選択の可能性はある」といった、冷静な分析とともにBEVの将来性に期待を寄せる声もありました。
特筆すべきは、環境への配慮を挙げた回答者の多くが、単なる「エコ」という漠然とした理由ではなく、「CO2削減のため」、「二酸化炭素の排出がない」など、具体的な環境負荷低減効果を意識していることです。これは、HEVオーナーが既に環境性能の高い車両を選択している層であり、より一層の環境負荷低減を目指す意識のあらわれと言えます。
「次回の購入の時は、電気自動車が主流で、充電に困らない状況になっていると思うから」という回答に代表されるように、多くの回答者が5年後、10年後を見据えた選択として、BEVを検討していることも特徴的でした。
「ランニングコストが安そう」 コストメリットに注目!
次に多かったのが、「ランニングコストが安そう」、「ガソリン価格の高騰」といった経済面での期待です。特に、近年の原油価格の不安定さを背景に、電気自動車のコストメリットに注目が集まっています。
「年齢が高くなるとそれほど遠乗りをしなくなると思うので、ランニングコストのかからない車を考えるため」というコメントからは、ライフスタイルの変化に合わせた車選びを考える方々の存在も明らかになりました。
また、「自宅で充電でき、ガソリンスタンドに行かなくてよくなる」、「太陽光パネルと蓄電池を導入しているので、電気自動車と相性が良い」など、実際の使用面でのメリットを具体的にイメージされている方も多くいらっしゃいました。これらの回答者の多くは、既に家庭での太陽光発電システムを導入されているか、導入を検討されている方々で、家庭のエネルギーマネジメントの一環としてBEVを位置づけている様子がわかります。
さらに、「災害時の電力供給が可能」、「停電時に役立ちそう」という非常時の活用も、BEVを選ぶ重要な理由として挙げられています。近年の自然災害の増加を背景に、車両を「動く蓄電池」として活用できる点に着目する声が増えているようです。
「静粛性」、「加速性能」といった、BEV特有の走行性能を評価する声も少なからず見られました。「エンジン特有の振動、排ガスがなく静粛性が高いから」、「モーターの方がパワーがあるから」など、既にBEVの試乗経験がある方からの具体的な評価も寄せられています。
気になるのは充電・走行距離・補助金など
一方で、BEVについて知りたい情報としては、「充電設備の場所や待ち時間」、「1回の充電での走行可能距離」といった実用面での質問が圧倒的に多く寄せられました。「リアルな走行可能距離」、「実際の航続距離」という表現からは、カタログ値と実際の使用感の差を気にしている様子もうかがえます。
特に「充電できるスタンド等の施設の場所や待ち時間」、「その車の充電時間」、「航続距離」、「燃費(電費)」などという回答に代表されるように、充電に関する具体的な情報を求める声が目立ちました。「バッテリーの寿命」、「経年劣化した後のメンテナンス費用」といった、BEV特有の懸念事項についても多くの質問が寄せられました。これは、比較的高額な投資となるBEVの購入を検討する上で、長期的な維持費用の予測を重視する傾向を示しています。
興味深いのは「国と自治体から補助金が100万円程度出ること」など、具体的な補助金額を意識した回答も多く見られたことです。「自動車税&重量税が5年間発生しないこと」といった税制面でのメリットを挙げる声もあり、購入時の経済的なインセンティブへの関心の高さがうかがえます。
また、「マンションで充電設備を設置する補助金情報」、「青空駐車の場合、充電設備をいかに設置するか?その費用は?」など、住環境に応じた充電設備の導入に関する具体的な情報を求める声も目立ちました。これらは、BEVの導入を具体的に検討する際の重要な判断材料となっているようです。
「日本メーカーが本気で電気自動車に力を入れるかどうかで方向性を見ている」、「いずれガソリン車を販売しないと言っているし、近未来感のある車に魅力を感じるから」といった、メーカーの開発姿勢や将来戦略を注視する意見も見られました。「スポーティーなデザインが非常に少ない」といった、車としての魅力や選択肢の少なさを指摘する声もありました。
さらに、「家庭用ソーラー・蓄電池を含めたトータルシステムの詳細、導入・ランニングコスト、補助金」といった、家庭全体のエネルギーマネジメントの観点からBEVを検討する声もありました。これは、BEVが単なる移動手段としてだけでなく、家庭のエネルギーシステムの一部として認識され始めていることを示しています。
このように、環境意識の高まりと経済的なメリットへの期待から、多くのHEVオーナーがBEVへの興味を示している一方で、充電インフラや航続距離といった実用面での不安も依然として大きいことが今回のアンケートから明らかになりました。特に、充電設備の整備状況や実際の使用における課題、バッテリーの耐久性といった点について、より詳細な情報を求める声が多く見られました。
また、家庭での充電設備の設置や補助金制度など、BEV導入に向けた具体的な準備に関する情報ニーズも高いことがわかりました。これらの不安要素が解消され、より具体的な導入情報が普及していくにつれて、BEVへの移行を検討するオーナーはさらに増加するものと予想されます。
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【アンケート調査概要】
アンケート内容:お車に関するアンケート
調査対象:おとなの自動車保険契約者
総回答者数:2,860人
実施期間:2024年6月24日~2024年6月28日

分析と声の紹介:田代真人さん
福岡県出身。九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。
その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にてWebマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て、起業。
出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動。現在は、桜美林大学非常勤講師など複数の大学で「コミュニケーション」「編集論」を教えている。そしてはじめてのEVとしてテスラ「モデルY」を2022年に購入し、EVカーライフを体験中。