HOW TO EV VOICEでは、『おとなの自動車保険』会員を中心に多くのマイカー所有者の声を集めるための口コミアンケートを定期的に実施しています。
第1回のアンケートは2024年6月の終わりから7月にかけて実施しました。EVオーナーだけでなく、様々な車種のオーナーにもEVカーライフについてどのように思っているか、このアンケートをもとに、EVカーライフの先輩の回答を分析しつつ、シリーズでクルマオーナーの声を紹介していきます。
さて、第3回のテーマは軽EVのオーナー像を探ってみようと思います。
軽EVはEV黎明期に生まれ、現代日本で大ヒットしている

日産と三菱自動車が共同開発した軽EV日産「サクラ」と三菱「ekクロスEV」は、2022年の発売以来累計受注台数は5万台を突破するなど大ヒットしています。この軽EVは2009年に世界初の量産EVとして発売された三菱「i-MiEV(アイ・ミーブ)」と2010年発売の日産「リーフ」の経験を踏まえて開発されました。この大ヒットはEVシステムや装備などにさまざまな過去のノウハウがいかされていることも無縁ではないでしょう。
それら今まで培われた最新技術の結晶を体験している方々のみならず、長期間i-MiEVに乗ってきたオーナーの意見をふまえて、アンケートから見えてくる軽EVオーナー像を探っていきます。
まず、軽EVに対するオーナーの満足度は非常に高いことがアンケートからうかがえます。「非常に満足」と「満足」をあわせると93%になり、この割合は、EVオーナー全体とまったく同じです。その理由は「電気自動車に乗って満足だから」とシンプルな方もいれば、「安全性・走行性・安定性が良いのと、ガソリンスタンドへ行かなくてすむので」と、利便性と安心感を同時に評価している声もありました。
多くのオーナーが軽EVの静粛性や加速性能を高く評価しています。「静かで乗り心地も良い」や「トルクがあって走りやすい」といったコメントがそれを物語っています。また「ランニングコストが安い」と経済的な面を重視する意見も多く、「ガソリン車と比較して維持費が非常に安くすむ」という点が大きな魅力となっていることがわかります。
一方で、「もう少し航続距離が長いと非常に満足」といった声もあり、現状に満足しつつもさらなる性能向上を望むユーザーがいることも事実です。
「小回りがきき、買い物や通勤用として乗りやすい」

航続距離が短いという課題は、軽EVを検討する際に多くの方が気にする点です。カタログスペックを見てみると三菱「i-MiEV」が160km(10・15モード)、日産「サクラ」は180km(WLTCモード)、三菱「ekクロスEV」は180km(WLTCモード)です。日産・三菱の開発チームは軽自動車に求められる適度な航続距離をこのあたりに設定し、低価格と高満足度を両立したと思われます。
その一端はアンケート回答にも現れています。「軽自動車で、小回りがきき、買い物や通勤用として乗りやすい」というコメントからもわかるように、日常的な使い方では航続距離の短さはあまり気にしていないようです。
また、特に自宅での充電環境が整っている場合、ガソリンスタンドに行かなくてすむことが非常に大きなメリットとして受け入れられています。アンケートによると、約86%のオーナーが自宅充電を行っています。この数字はEV全体の77%に比較して9ポイントも高い数字です。なかには「太陽光で充電している」と答えた人もいて、ほとんど燃料(電力)費がかからないという人もいました。
ただし、マンションに住んでいるオーナーからは「マンションに充電設備がないため、どちらとも言えない」との声もあり、住宅環境によっては軽EVの使用が不便に感じられることもあるようです。また「充電箇所が少ない」という意見もあるため、充電スポットの設置状況がより改善されることを望む声が多数寄せられています。特に長く軽EVに乗られていると思われるi-MiEVのオーナーから同様の意見があり、これらの課題が短期間ではなかなか解決できないことがわかります。
満足の先には期待も大きい
次に軽EVを購入する際に重視される点としては、航続距離の向上や充電設備の改善が挙げられます。「航続距離の長距離化」や「電池性能の強化」を求める声が多く、より長距離走行が可能な軽EVが期待されていることがわかります。現状、日産「サクラ」と三菱「ekクロスEV」の航続距離である180km(WLTCモード)は、より実際の航続距離に近いと言われているEPAモード換算で約144kmになるため、ちょっと遠出したいときは短いと感じるようです。
また「安全性能の強化」や「自動運転性能強化」を求めるコメントもあり、安全性能や自動運転機能の強化にも期待が寄せられています。これは、EVが日常生活だけでなく、今後の交通インフラやテクノロジーの進化に対応することにオーナーたちが期待していることを示しています。
さらに「ランニングコストの安さに加えて、非常時に電源を供給できる」というように、非常時の活用法についても関心が高まっています。軽EVは、V2Hシステムに対応しており、バッテリーに蓄えた電気を自宅へ給電したり、災害時などに家庭や地域の電源供給源にしたりできるので、これが次のクルマ選びのポイントになるかもしれません。
今回のアンケートに回答いただいたEVオーナーのうち、クルマを複数台所有しているEVオーナーは45%でした(クルマを1台所有しているEVオーナーは55%)。軽EVについての満足度をみてみると、クルマを1台所有しているEVオーナー88%で、クルマを複数台所有しているEVオーナーは100%という結果でした。やはり、1台所有の軽EVオーナーからは「走行距離が伸びてほしい」 「航続距離を長くできるように開発を進めてほしい」という声が多く、複数台所有の軽EVオーナーからは走行距離に関する不満や指摘はまったくありませんでした。
軽EVオーナーは、静粛性や経済性、環境への配慮など、多くの面で現行の軽EVに満足しています。特に、日常的な短距離移動が主な用途である場合、航続距離の短さはそれほど大きな問題ではないようです。しかし、これ一台ですべてのシーンをカバーしようとすると長距離移動を可能にするための充電設備の充実や航続距離の向上が求められます。今後、価格やスペースは多少妥協しても、先進機能や航続距離がプラスされる軽EVが登場することで、さらに多くの人々が軽EVを選ぶようになるのではないでしょうか。
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【アンケート調査概要】
アンケート内容:お車に関するアンケート
調査対象:おとなの自動車保険契約者
総回答者数:2,860人
実施期間:2024年6月24日~2024年6月28日

分析と声の紹介:田代真人さん
分析と声の紹介をナビゲートしてくれるのは田代真人さん。
福岡県出身。九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。
その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にてWebマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て、起業。
出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動。現在は、桜美林大学非常勤講師など複数の大学で「コミュニケーション」「編集論」を教えている。そしてはじめてのEVとしてテスラ「モデルY」を2022年に購入し、EVカーライフを体験中。