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3年連続でアップする自動車保険料~その背景と内容は?

公開

2024/10

 20251月から、大手損害保険会社の自動車保険料が全国平均で3.55.0%引き上げられる模様です。すでに261月からの引き上げも予定されており、今年に続いて3年連続のアップとなります。

自動車保険料アップの背景

 コロナ禍の2020年、21年は保険金の支払いが減っていた自動車保険ですが、22年からは支払いが増加に転じています。損害保険料率算出機構(以下、機構)が公表している「自動車保険の概況2023年度版(2024年4月発行)」で保険金支払額の推移を見ると、18年、19年は2兆円前後、20年、21年は約17000億円と減少。しかし、22年は約19000億円と、19年の水準に戻っています。同資料の「第32表 交通事故発生件数の推移」を見ると、件数は18年約43万件、19年約38万件、20年~22年約30万件となっており、行動制限が解除されて事故が増えたわけではなさそうです。

 251月の自動車保険料引き上げは、自然災害による被害のリスクが高まっていること、人件費の上昇や車両の高性能化で部品価格が高額になり、修理費が高くなっていることが主な理由です。

軽自動車の料率クラスが増える

 機構は236月に自動車保険の「参考純率(※)」の改定を発表しています。損保各社が行う251月の保険料改定時には、この内容が反映される予定です。

 改定の内容は、自家用軽四輪自動車(軽自動車)の型式別料率クラスを、現行の3クラスから 7クラスに拡大するというもの。

 自動車は車種によって事故に遭う確率や修理費に差があり、加入者同士の公平性を保つため、普通車の場合、料率クラスは17区分になっています。最近では、軽自動車も衝突被害軽減ブレーキ搭載など安全性能が多様化してきたため、クラスをより細分化する必要が出てきました。下図のように、現行のクラス13が改定後のクラス35の保険料に相当し、リスクが低い(保険料が安い)クラス12と、リスクが高い(保険料が高い)クラス67が新たに追加されます。一番リスクが低いクラスと高いクラスとの保険料の差は、現行の1.2倍から1.7倍程度に広がる見込みです。

※ 加入者が支払う保険料のうち「純保険料」(事故発生時に保険会社が支払う保険金に充てられる保険料)の参考数値で、これを参考に損保各社は自社商品の純保険料を算出する。

(図版)浅田.png

26年の改定に反映される内容

 機構による自動車保険の参考純率改定は、今年の6月にも発表されています。その内容を反映した自動車保険料引き上げが、261月に行われる予定です。

 この6月に発表された主な内容は、

参考純率を平均7%引き上げ

リスク実態を反映した料率区分ごとの割増引率の見直し

 ・新車割引の見直し

 ・年齢条件の見直し

 ・運転者限定の見直し

被害者救済費用特約の新設

 自動運転機能の不具合などで被保険者に法的責任が発生しない場合でも、被害者の救済が可能

特定小型原動機付自転車の区分の新設

 電動キックボードなど、リスク特性が異なるモビリティに対応

 などとなっています。

 相次ぐ保険料アップは家計に響きますが、自動車保険は万一加害者になった場合の賠償責任をカバーします。家計を守るための保険と割り切り利用すべきでしょう。

執筆/生活設計塾クルー 浅田里花(発行日:2024/9/21)

当レポートに記載されている情報は執筆時点のものです。実際に投資や保険契約等を行う場合は情報を確認してご自身の判断で行ってください。当レポートを利用したことによるいかなる損害等についても執筆者及び生活設計塾クルーはその責を負いません。

添付ファイル
3年連続でアップする自動車保険料~その背景と内容は?(浅田里花).pdf
執筆
浅田里花 (あさだ りか)

(株)生活設計塾クルー取締役、ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)、東洋大学社会学部非常勤講師。 1982年に同志社大学卒業後、日興證券(当時)勤務を経て、1988年に独立系FP会社(株)エムエムアイに入社し、ファイナンシャルプランナーとなる。1993年からフリーでの活動をスタート。現在は、生活設計塾クルーにて個人の相談業務を行うほか、執筆、講演活動を行う。Yahoo!ニュース「エキスパート」オーサー。主な著書に『50代からの「確実な」お金の貯め方、増やし方教えて下さい』(主婦の友社)など。

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