日本のスマートフォン(スマホ)利用率は現在約98%。朝は目覚まし、通勤時は定期券、メール管理や銀行・証券口座管理、キャッシュレス決済や健康管理に至るまで、私たちの日常はスマホなしに成り立たないほどです。この10年あまりで、ライフスタイルは大きく変わりました。
なかでもソーシャルメディア系サービス「LINE」の利用率は約95%。個人間利用だけでなく、LINEで事業者サービスを受けるのも今や一般的になりました。
今回取り上げる火災保険金請求手続きもそのひとつ。スマホやLINEを利用した保険金請求手続きは、とても便利で簡単です。保険金請求が早くすむほど保険金を早く受け取れ、生活をより早く立て直せるメリットがあります。
事故連絡も保険金請求もスマホで完了
被災や事故で住まい等に損害を受けたときは、まず損保会社に電話連絡するのがこれまでの保険金請求の出発点でした。その後、損保会社による立会調査や、書類のやり取りが行われ、2~3週間後に保険金支払い、といった流れが一般的です。
規模の大きい災害では損保会社に電話が殺到し、繋がりにくくなることもあります。そんな時でも速やかな生活再建を後押しするため、損保会社には迅速な保険金支払いが要請されます。
そこで損保各社が取り組んでいるのが、保険金請求のDX(=デジタル化)です。電話連絡不要、立会調査も原則不要とし、契約者がスマホで撮影、アップロードした写真で損害確認が行われ、保険金請求までの作業を最短で即日完了するスピード感です。
以下、大手4社の取り組みを紹介しましょう。
3社は水災でも立会調査が不要
損保ジャパンは公式サイトでの事故受付のほか、LINEによる受付も設けています。三井住友海上、あいおいニッセイ同和は、公式サイトで事故受付専用チャットを設けており、三井住友海上はLINEでも事故受付をしています。
連絡後はAIによるチャット等の支援を受けて契約者自ら損害状況の写真を撮り、必要書類と共にウエブ上やスマホでアップロードし、損保会社が確認して損害額を確定します。損保ジャパンでは、建物に生じた損害等を撮影するだけでAIが見積りを作成するサービスも提供します。
上記3社では、水災による損害を含め、立会調査は原則不要です。
東京海上日動では、公式サイトの事故受付のほか、平時も契約確認等ができる「マイページ」を通じて事故報告や保険金請求ができます。損害の確認方法は前3社と同様で、契約者がウエブ上にアップロードした損害状況の写真や必要書類で確認します。ただし、東京海上日動では、水災による損害については立会調査を要するとしています。
このように、請求手続きのデジタル化では時間と手間が省略できます。多くの世帯が被災する広域災害でも、さらに電話連絡が難しい聴覚や発語に障害がある人であっても、損保会社への迅速なアクセス・手続きが可能になるメリットは大きいでしょう。
スマホやLINEを用いた保険金請求手続きは、多くの損保会社が提供しています。自分の契約先の手続方法を平時に確認しておくと安心です。
地震保険は原則立会調査が必要
なお、地震保険金を請求する場合は、現状では、原則として全件の立会調査が行われることになっています。
しかし将来、首都直下地震などの大規模地震が発生すると、被害世帯が相当数に及ぶおそれがあります。こうした場合も、これまでどおり全件立会調査を行うということになると、調査要員が不足して調査が遅れ、保険金支払いが大幅に遅れるおそれがあります。よって、地震保険金の請求手続き等のデジタル化は、地震保険制度における将来的な検討課題と言えるでしょう。
より迅速な保険金支払いに向けて、損保業界には引き続きDXを活用した新しい技術の提供を期待します。
執筆/生活設計塾クルー 清水香(発行日:2024/8/3)
※当レポートに記載されている情報は執筆時点のものです。実際に投資や保険契約等を行う場合は情報を確認してご自身の判断で行ってください。当レポートを利用したことによるいかなる損害等についても執筆者及び生活設計塾クルーはその責を負いません。
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- スマホで即日請求も可能!簡単便利な火災保険金の請求手続き(清水香).pdf