この10月から火災保険料がアップし、保険料が決まる仕組みも変わります。2023 年6 月に損害保険料率算出機構が、火災保険の「参考純率」(事故発生時に保険会社が支払う保険金に充てられる保険料の参考料率)を全国平均で13%引き上げたこと、水災に関する保険料率を地域のリスクに応じて5区分に細分化したことが反映されます。
火災保険料がアップする理由
損害保険会社は参考純率を参照しながら、それぞれの判断により、自社商品の保険料を決めますから、参考純率の引き上げは火災保険料のアップにつながるわけです。
火災保険は火災だけでなく、風災、水災、雪災、ひょう災などの自然災害や、建物の水道管からの水漏れなど、住まいに関わる損害を幅広く補償する保険です。火災保険の参考純率が引き上げられた背景には、毎年のように台風・大雨・大雪・ひょう災などによる大きな被害が発生していることがあります。
また、築年数の古い住宅の増加で損壊リスクが高まっているうえ、建築工事の資材費や人件費の上昇で修理費が高騰しています。これらは当然、火災保険金支払いの増加要因です。
水災リスクにより違う保険料に
火災保険の参考純率引き上げは2014年以降で5回目ですが、これまでと違っている点は、冒頭で述べた「水災料率の細分化」です。
水災リスクには、河川の氾濫による「外水氾濫」、集中豪雨で下水道の処理が追いつかずに水が溢れる「内水氾濫」、集中豪雨による「土砂災害」などがあります。いずれも近年増加傾向ですが、住んでいる地域や建物の状況によっては、リスクが低いケースもあります。ところが、水災に関する料率は全国一律です。
そのため、「わが家は水災リスクが低い」と判断した場合、水災補償を外して契約する傾向も出ていました。個々の家計にとっては合理的な判断かもしれませんが、契約者全体にとっては水災補償の保険料引き上げにつながります。
加入者間での保険料負担の公平性を保ちつつ、必要な補償を継続していけるように検討した結果が、今回の水災料率の細分化と言えます。
わが家の水災リスクを調べよう
細分化は市区町村単位となっています。根拠となるデータとして、水災リスクの6割を占める外水氾濫については国土交通省の「洪水ハザードマップ」、残り4割の内水氾濫と土砂災害については国土交通省の「水害統計」や国立研究開発法人防災科学技術研の「地形データ」などが活用されています。
区分は、最も保険料が安い(水災リスクの低い)1等地から、最も保険料が高い(水災リスクの高い)5等地までの5区分です。区分数を多くするほど、最も高い区分と最も低い区分の差が大きくなり過ぎるということで、5区分と決まりました。
下表のように都道府県で違いはありますが、細分化した保険料(火災、風災、水災、雪災等の合計)を細分化しなかった場合とで比較すると、1等地は平均で約6%低く、5等地は約9%高い水準になるようです。
気になるのは、わが家が何等地に当たるかでしょう。損害保険料率算出機構のHP内にある「水災等地検索」で市区町村単位での区分を検索することができます。ただし、同じ市区町村でも実際の水災リスクには差があります。わが家の住所地での水災リスクは、ハザードマップをチェックしましょう。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」からも検索できます。
水災リスクが低そうだとしても、ゼロというわけではありません。高さのあるマンションで、内水氾濫による配水管の逆流といった被害が、実際に発生したケースもあります。細分化により加入しやすい保険料になる可能性がありますので、水災の補償はつけておいたほうが無難です。
国際的な研究でも、強い台風の増加は地球温暖化の影響が示唆されており、リスク環境が以前とは変化していることが挙げられます。保険料アップを機に、わが家の災害リスクと向き合ってみてはいかがでしょう。
執筆/生活設計塾クルー 浅田里花 (発行日:2024/8/31)
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