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加入中の保険や共済、被災時に受け取れる額を知っておこう

公開

2024/06

石川県七尾市出身の知人Aさんは、2024年初の能登半島地震で実家が被害を受けましたが、ほぼ持ち出しなしで修繕費を賄えそうだといいます。公的給付である被災者生活再建支援金(=以下、支援金)50万円と、任意加入の地震保険で220万円を受け取れるためです。

何にせよ、生活基盤を失った中で受け取れるお金は本当に助かるもの。公的支援の内容を把握するとともに、保険にせよ共済にせよ、何かの形で備えることが大切だとわかります。改めて、代表的な公的支援と自助の手段、その内容を確認しましょう。

支援金は最大300万円

地震を含む自然災害で住まいが損害を受けたときは、損害の程度に応じて国や自治体による種々の支援を受けられます。中でも代表的な支援が、持ち家・賃貸を問わず住まいの被害等に応じて現金が給付される「被災者生活再建支援制度」です。今回の能登半島地震でも、石川県、富山県、新潟県の全域にこの制度が適用されました。

自治体が発行する「り災証明書」で住宅が全壊・大規模半壊と判定された世帯は、住宅の被害程度に応じ基礎支援金50~100万円を受け取れます。加えて、全壊・大規模半壊および中規模半壊となった世帯は、その後の住宅再建方法に応じた加算支援金50~200万円を受け取れます。最大額は合計300万円ですが、単身世帯は4分の3の金額になります。なお、半壊以下の世帯は対象外なので支援金を受け取れません。

Aさんの実家は中規模半壊と判定されました。基礎支援金は対象外ですが、住宅補修として50万円の加算支援金が支払われるようです。

各種地震補償(保障)の違い

地震保険、JA共済は最大50%

任意で地震被害をカバーする手段には、損保会社の扱う地震保険のほか、共済や少額短期保険などがあります。知っておきたいのは、地震災害の予測困難性という特徴から、どの商品でも契約1件当たりの保険(共済)金額が住宅再建価額より小さくなること。火災保険・共済のようにそれだけで住宅を再建し得る金額にはなりませんが、支援金と異なり、半壊以下程度の損害でも支払いを受けられる場合があります。

各商品の最大補償(保障)額は、地震保険が火災保険金額の50%、JA共済が損害額の50%、こくみん共済COOPとCO-OP共済は火災共済金額の30%、都道府県民共済は20%です。修繕費に満たないこともあるでしょうが、Aさんは支援金と任意に加入していた地震保険金との合計で修繕費を賄えたわけです。

支援金や自分の加入する保険・共済からどの程度のお金を受け取れるかを、早い機会に確認しておきましょう。そして、地震等で被害を受けたら、速やかに契約先に連絡をしましょう。電話のほか、契約先のWebサイトを通じて連絡できるところもあるので、事前に確認しておくと安心です。

損保・JA共済は立会調査が基本

被災後は保険金等の請求手続きに先立ち、契約先による損害調査が行われます。その方法は契約先で異なり、立会調査を要するケース、り災証明書で認定するケースがあります。

損保会社の取り扱う地震保険では、原則として被害物件全件に立会調査が行われます。損害の認定基準は地震保険独自のもので、損保会社を問わず一律の認定基準です。

なお、この基準は自治体の発行するり災証明書とは認定の着目点が異なります。そのため、り災証明書で全壊と認定された住宅が、地震保険で必ずしも全損と認定されるわけではありません。

公平性を担保するため実施される立会調査ですが、深刻な広域被害が起これば相当の時間を要するおそれもあります。そこで損保各社が合同で衛星写真等を用いた「共同調査」を行い、立会調査が省略されることもあります。共同調査の対象地域・物件になると、損保会社から連絡が来るので、契約者は連絡不要です。

JA共済も立会調査が基本ですが、能登半島地震では人工衛星画像等による全損一括認定が実施されました。こくみん共済COOPでも同様の対応が実施されています。

都道府県民共済の「地震特約」、SBIいきいき少短「地震の保険」では独自調査は行われません。り災証明書を用いて認定を行い、保険金等が支払われます。

添付ファイル
加入中の保険や共済、被災時に受け取れる額を知っておこう(清水香).pdf
執筆
清水香 (しみず かおり)

(株)生活設計塾クルー取締役、ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)。 中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年(株)生活設計塾クルー取締役に就任、2019年FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表に就任。 家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV・ラジオ出演も多数。

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