基本手当を受給するための条件
雇用保険の「失業等給付の基本手当」(基本手当)は、失業後の生活や求職活動の支援のために支払われるもので、受け取るためには次の条件を満たす必要があります。
- ハローワークで求職の申し込みを行い、「失業状態」にある
- 離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12ヶ月以上ある
上記の失業状態とは「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても職業に就けない状態」をいいます。そのため、会社を辞めて起業の準備に専念しているとか、すでに事業を開始しているといった場合は、基本手当を受け取ることができません。
そして、基本手当の受給手続きは次のような流れで行われます。
- 離職票と個人番号確認書類などを持ってハローワークで求職の申し込みをする
- 受給資格の決定を受けたら雇用保険受給者初回説明会に出席する
- 求職活動をする
- 失業の認定を受けて失業手当(失業給付)を受け取る(4週に1度)。手続きをしたからといって、すぐに受け取れるわけではありません。
自己都合退職の場合、原則として、受給手続日(上記「1」)から待期期間の7日が経過した日の翌日から2ヶ月間の給付制限があります。
会社を辞めて起業した人が基本手当を受け取れるケース
もし、起業のために会社は辞めたけれど、すぐに事業を開始できる状態にはなく、準備等に時間がかかるという場合、並行して上記のような求職活動を行っていれば、基本手当を受給できる可能性があります。
また、要件を満たせば、「再就職手当」が受け取れるかもしれません。再就職手当とは、基本手当の給付日数が一定以上残っている段階で再就職が決まった場合に支給されるものですが、起業も対象となります。ただし、給付制限を受けている人は、待機期間満了後1ヶ月間はハローワークか職業紹介事業者の紹介による就職をすることが条件ですから、その期間が経過してからの開業でなければ受給できません。
次に、受給資格はありながら、基本手当を受けないまま起業し、うまくいかずに短期間で廃業した場合の、「事業開始等による受給期間の特例」(起業後廃業の特例)を見ていきます。
先述のように、離職後すぐに起業した人は求職活動をしていないため、基本手当の受給対象にはなりません。起業後廃業の特例とは、そのような人を対象に、最大3年間、受給期間に算入しない期間を申請できるというものです。通常、基本手当の受給期間は離職日から1年間ですが、この特例により、起業中の3年間と基本手当の受給期間1年間を合わせて4年間、受給期間を延長することができます。つまり、起業から3年以内に廃業した場合、事業を行っていた期間をなかったことにして基本手当を申請できるのです。
「起業に失敗」での受給要件
申請できるのは、以下のすべてを満たす事業であることが要件です。
- 事業の実施期間が30日以上ある
- 「事業を開始した日」「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」のいずれかから起算して30日を経過する日が受給期間の最後の日以前である
- 当該事業について就業手当(※1)または再就職手当を受け取っていない
- 当該事業により自立することができないと認められる事業ではない(※2)
- 離職日の翌日以後に開始した事業(※3)
特例の利用にあたっては、事業開始日の翌日から2ヶ月以内に、住所を管轄するハローワークに「受給期間延長等申請書」を提出します。その際には、離職票または受給資格者証、事業を開始したことを証明できる書類を添付する必要があります。
事業開始早々、起業後廃業の特例に備えて手続きをすることには抵抗があるかもしれません。しかし、廃業せざるを得なくなったときは「時すでに遅し」です。リスクヘッジとして手続きをしておくことをお勧めします。
※1基本手当の受給資格がある人が常用雇用等以外で就業した場合に支給
※2登記事項証明書や開業届の写し等で確認
※3離職日前に当該事業を開始し離職日の翌日以後に当該事業に専念する場合を含む
- 添付ファイル
- 「会社を辞めて起業」~知っておきたい雇用保険からお金が受け取れるケース(内藤眞弓).pdf