65歳以降の社会保険
総務省によると、2022年の65歳以上の就業率は25.2%で、年齢別では65~69歳が50.8%、70~74歳は33.5%となっています。
現在、企業には、65歳までの雇用が義務付けられています。 いったん60歳で定年退職を迎えても、引き続き、65歳になるまで継続雇用するなど何らかの形で雇用が維持されます。さらに、2021年4月からは企業に対し、70歳までの人についても雇用維持や就業機会の確保が努力義務化されました。このため、65歳以降も働き続ける人が増えています。
65歳以降も働き続けた場合、引き続き健康保険や厚生年金、雇用保険といった社会保険に加入することになります。ただし、65歳を境にして年金・雇用保険の給付などがそれ以前と大きく変わります。
今回は65歳以降の公的年金や雇用保険等についてご説明しましょう。
公的年金について
①繰下げ受給の選択ができる
65歳になる前から「特別支給の老齢厚生年金」を受給している人が65歳になったときは、新たに「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を受給することになります。
対象となる人には、65歳になる誕生月の初め(1日生まれの人は前月の初め)に、日本年金機構から「年金請求書(はがき)」が送付されます。
原則通りに、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給する場合は、誕生月の末日(1日生まれの人は前月末日)までに年金請求書を提出します。この提出が遅れると、年金の支払いが一時的に保留になります。
なお、65歳で受け取らずに、66歳以降75歳(1952年4月1日以前生まれの人は70歳)までの間で繰下げて増額となった年金を受け取ることもできます。 繰下げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を同時に、あるいはどちらか一方のみを繰り下げることもできます。
原則通り65歳から受け取ろうか、あるいは繰り下げようかと迷った人は、65歳時の年金請求書の提出を一時保留にしましょう。いったん提出すると取消しができないからです。年金請求には5年の時効もありますが、じっくり考えてから手続きすることをお勧めします。
②在職老齢年金
65歳以降も働きながら厚生年金に加入している場合、月額換算した老齢厚生年金と給与や賞与(直近1年間の賞与額÷12)の合計額が月48万円を超えると、超えた部分の年金の半分が減額となります(在職老齢年金制度)。
一方、合計額が月48万円以下であれば、老齢厚生年金の減額はありません。65歳以降の働き方はフルタイムだけとは限りませんので、年金が減額されない働き方を検討しても良いでしょう。
③在職定時改定
従来、65歳以上の厚生年金加入期間の年金額への反映(増額改定)は、退職するかあるいは70歳になるまで待たなければ行われませんでしたが、2022年4月より、在職中であっても毎年10月分から改定される「在職定時改定制度」が導入されました。
これは、毎年9月1日(基準日)時点の老齢厚生年金受給者の年金額について、前年9月から当年8月までの1年間の被保険者期間を算入し、毎年10月分(12月支払い分)の年金額を再計算するというものです。
対象は、65歳以上70歳未満の老齢厚生年金の受給者。たとえば、給与20万円で1年間厚生年金に加入すると、老齢厚生年金が年間13,000円ほど増えます。なお、在職定時改定は、老齢厚生年金を実際に受け取っていることが前提のため、老齢厚生年金の繰下げ待機中の人は、対象外となります。
雇用保険の給付
65歳になる前に退職した場合、雇用保険の「基本手当(失業給付)」を受給することになりますが、65歳以上で退職した場合は、「高年齢求職者給付金」の対象となります。
基本手当との違いは、給付日数です。基本手当は、被保険者期間や離職した理由などにより90~360日分ですが、高年齢求職者給付金は、被保険者期間が1年未満であれば「30日分」、1年以上だと「50日分」となっています。
高年齢求職者給付金は一時金で受け取ることができ、支給要件を満たせば、何度でも受給することができます。また、基本手当と特別支給の老齢厚生年金は、同時に受給できませんが、高年齢求職者給付金と老齢厚生年金は、同時に受給することができます。
健康保険と介護保険について
健康保険については、75歳になるまで引き続き加入することができます。被扶養者となる配偶者がいる場合は、配偶者が先に75歳(75歳で後期高齢者医療制度に移行)にならない限り、引き続き保険料の負担なく被扶養者の資格を維持できます。
介護保険は、在職中でも、65歳からは第1号被保険者になります。第1号被保険者の保険者は、居住している自治体となり、保険料は年金から天引きされます(しばらくは納付書で納付)。介護保険料は、自治体により所得区分等が異なります。前年の所得等を基に計算しますが、在職中より高くなることが一般的。65歳になる前に自治体のホームページなどで介護保険料の水準などを確認しておきましょう。
- 添付ファイル
- 65歳を働きながら迎える人の公的年金・雇用保険・健康保険(望月厚子).pdf