2024年以降、私たちが負担する火災保険料が変わります。損保会社が火災保険料率を決める際に参照する参考純率が、2023年6月に全国平均で13%引き上げられたためです。引き上げ率は過去最大で、居住地や建物構造、築年数によりその程度は異なるものの、多くの火災保険料が引き上げられることになりそうです。
加えて火災保険料率のうち、床上浸水や土砂災害による被害をカバーするための水災料率が、地域のリスクに応じて市区町村ごとに細分化されます。等地区分は1等地から5等地の全5区分で(下表参照)、保険料率の差は最大1.2倍となります。
2024年以降はこうして、居住する市区町村の水災リスク危険度に応じ、負担する水災保険料も変わります。
気候変動の影響は火災保険料にも
参考純率引き上げの背景にあるのは、地球規模の気候変動です。風水災は激甚化しており、毎年どこかで被害が生じています。さらに昨今、災害等の被害を受けやすい老朽化住宅が増加傾向にあり、住宅修繕費が上昇傾向であることも、支払われる保険金の増加に拍車をかけています。2011年度以降の火災保険収支は、2015年度を除きすべて赤字。参考純率の大幅な引き上げには、このような背景があります。
水災リスク別保険料になる
水災料率が市区町村単位で細分化された理由は、水災料率の公平性を担保し、かつ多くの人に水災補償を納得して付帯してもらうためです。水災に遭いやすいかどうかは居住地で異なります。しかし、水災料率はこれまで全国一律であり、立地で異なるリスクを反映しない保険料は不公平との指摘もありました。
今回設けられた水災料率の5区分は、河川の氾濫による洪水、豪雨で排水が追い付かず低地に水が貯まるなどして起こる内水氾濫、土砂災害など水災リスク全体で評価を行い、より合理的に火災保険料を導き出すしくみです。同じ市区町村内でも、洪水のリスクや土砂災害リスクの大きい場所がある一方、いずれもない場所もありますから、この区分により自宅の水災リスクが把握できるわけではありません。さらにいえば、現在の等地区分が将来変わる可能性もあります。自宅の水災リスクの有無、および水災補償を付帯するかの判断は、自治体のハザードマップで確認しましょう。
保険料を抑えたいがためか、水災補償を付保する世帯の割合は近年減少傾向です。しかし、河川から離れた場所であっても、水災のおそれはあります。国土交通省資料によれば、全国の浸水棟数のうち、河川の氾濫等による浸水は3割ですが、内水氾濫による浸水は7割に達します。
ハザードマップで自宅のリスクを確認したいところですが、想定最大規模の降雨に対応した「内水ハザードマップ」を公表済みの自治体は、未だ1割。多くはこれから公表されることになります。戸建住宅やマンション低層階に住むなら、水災補償の付帯については慎重な検討が必要です。
自治体の補助制度あり!自宅の浸水リスクを低減する対策
水災では、住宅等へのダメージがかなり深刻になることもあるので、被害を受けないよう事前の対策を講じておくことも大切です。
そこで多くの自治体は、内水氾濫による被害防止のため、個人でできる治水対策として既存戸建て住宅に対し、雨水浸透施設の設置補助をしています。
雨水浸透装置は主に2つ。雨どいから流れる水をバケツ構造のますに流し込み、ますの側面にある穴から水を地中に浸透させる「雨水浸透ます」、浸透ますを置けない狭い場所でも設置できる「雨水浸透管」があります。多くの住宅が雨水浸透施設を設置すれば、地域の浸水被害を今以上に防ぐことに繋がります。
自治体により補助内容は異なりますが、東京都立川市では20万円上限、大阪市では15万円上限、埼玉県ふじみ野市HPには「県が工事費用を全額補助」とあります。制度内容、対象者かどうか、あるいは助成額についても、まずはお住まいの自治体に問い合わせてみてください。
- 添付ファイル
- 2024年以降、どこに住むかで「水災」保険料の負担が変わる(清水香).pdf