少額投資非課税制度(NISA)が2024年1月1日から大きく変わります。その改定の柱は非課税期間の恒久化と非課税枠の大幅な拡充です。
NISAは、2023年末までは、「つみたてNISA」(年間投資枠40万円、非課税保有期間20年、長期投資に適した投資信託)と「一般NISA」(年間投資枠120万円、非課税保有期間5年、上場株式・投資信託・ETFなど)、そして「ジュニアNISA」(年間投資枠80万円、非課税保有期間5年、対象商品は一般NISAと同様)の3つに分かれています。
うちジュニアNISAは、元々利用者数が少なく、新規口座開設は2023年までと決まっていました。また、つみたてNISAと一般NISAは毎年どちらかを選択することになっていますが、非課税限度額がつみたてNISAで最大800万円と多いとは言えず、かつ非課税保有期間に制限があることから、将来の生活を支える投資という意味では「物足りない」といった声も多くありました。
そこで、2014年1月からNISA制度がスタートした時に謳われた「貯蓄から投資へ」を、より実質的・本格的に進めるという目的を持って、今回の制度改定が行われたわけです。
2024年からの改正内容
2024年1月1日から新たに適用されるNISA制度は、端的にいうと、従来のつみたてNISAと一般NISAを一体化し、つみたてNISAに相当する部分を「つみたて投資枠」として、年間投資枠を40万円から120万円に拡大、非課税保有期間を無期限としました。そして、一般NISA部分は「成長投資枠」とし、年間投資枠を120万円から倍の240万円に、つみたて投資枠同様に非課税保有期間を無期限としたのです。
なお、現行のNISA制度で利用した枠は、制度終了時まで新NISAとは別に、非課税で保有できます。
投資対象商品は従来とほぼ同じですが、成長投資枠の商品ラインアップから「株式整理銘柄」や「毎月分配型投信」などを除外しています。
そして、一生涯で利用できる非課税枠の累計額は、1800万円(うち成長投資枠は1200万円まで)と拡大しました。しかもこれは一人当たりですから、夫婦単位で考えると、計算上は1800万円×2人=3600万円+非課税利益分が蓄積されることになります。共働き夫婦はもちろん、片働き夫婦でも年間110万円の贈与税の非課税枠を使えば、夫婦それぞれが累計額まで蓄積することも不可能ではありません。
上場株式等の課税関係
新NISA口座で株式等を売買して得た利益、あるいは投資信託等の売買で得た利益(譲渡益等といいます)にかかる所得税・住民税・復興特別所得税は非課税です。さらに、それらの商品から生ずる配当等についても同様となります。
本来の課税関係はと言えば、まず株式等の譲渡益(上場株式等とそれ以外の株式等とを分けて計算しますが、ここでは上場株式等を前提に話をします)は、銘柄ごとに譲渡価額から取得の時にかかった金額と手数料等(同じ銘柄を複数回に分けて購入した場合には、一定の方法で平均化)を控除して求めます。この譲渡益に対して、所得税15%・住民税5%・復興特別所得税(所得税率の2.1%)を合わせた20.315%の税率での申告分離課税となっています。
配当等については、原則として配当金そのものの金額に、株式の譲渡益と同様に20.315%の税率を掛けた税金が源泉徴収されます。総合課税が原則ですが、確定申告不要制度、申告分離課税の扱いも選択できます。
NISA制度では、これらが非課税となります。利益の2割が長期間にわたって非課税になることを考えれば、高配当の株式や長期投資に向く投資信託が選定の対象として浮上してくるのではないでしょうか。
新しいNISA制度の注意点
新しいNISA制度を活用するときには、以下の点に注意して下さい。
- つみたて投資枠と成長投資枠との合計の限度額は1800万円なので、それを上回る株式等を購入する場合には、NISA口座ではなく課税口座(特定口座、一般口座)で受け入れられることになる。
- また、成長投資枠の合計額が1200万円であることから、それを上回る株式等を購入する場合には、NISA口座ではできず、課税口座での購入となる。
- NISA口座内で売却時に譲渡損が生じた場合、その損失はないものとされる。すなわち課税口座との損益通算は認められない。
- 非課税限度額は取得価格の合計額、つまり購入金額の合計額となる。したがって、NISA口座内で売却した場合には、空いた枠について再投資ができる(現行のNISAでは、再投資は不可)。
ライフプランと連動を
今回の改正の特徴は、NISA口座の開設期間・非課税保有期間の無期限化、そして生涯累計額が1800万円へと大きく拡大されたことです。これらの優位性を活かし、住宅購入や子供の教育資金準備、老後資金設計などのライフプランに合わせて、適切な投資を考えることが重要になると思います。
- 添付ファイル
- 新NISA制度の活用と税制(坂部達夫).pdf