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高齢者も高加入率の医療保険、年をとっても請求できる?

公開

2023/04

現在、医療保険の世帯加入率は約9割で、近年は高齢者の加入率が増加しています。90歳以降の加入率は83%にものぼり、過去6年間で30%以上も増えています。

年齢を重ねても長く医療保障が続く場合、注意も必要です。給付金請求や契約変更の手続きができるのは原則本人なので、本人による手続きが困難な事態になると、困ったことになります。

今回、私の家族のエピソードを交えつつ、医療保険の手続きに困らない事前準備等を紹介します。

声が出ず本人確認不能に

昨年11月、遠方に住む父が倒れて入院し、手術を経て年末に退院しました。その後、加入していた医療保険の給付金請求のため、保険会社のコールセンターに父本人が電話をしました。その際、保険会社による本人確認が実施されます。

多くの場合、証券番号や氏名、生年月日や住所を、訊かれた本人が答えますが、父の契約保険会社で行われている本人確認は「声紋認証システム」。契約者が所定のフレーズを読み上げて声紋を登録、その後は登録声紋と電話の声を照合して確認するしくみです。声紋登録は済ませていた父ですが、今回は、病気の影響でうまく声を出せない状態で、何度かトライしたものの本人確認はできませんでした。

代理請求人である私が書類請求

こうした事態は、高齢者には十分予想できることです。アプリやネットによる保険金請求などDX化が進む昨今ですが、これらになじめない高齢者には難しく、手続きがうまくいかなければおっくうにもなります。昏睡状態、認知症に罹患するなど深刻な事態になると、本人の意思確認ができず請求自体が困難になります。

実は、両親が終活を始めた1年ほど前、ふたりが加入する医療保険について、本人に代わり家族などが給付金等を請求できるようにしておくことを提案し、私を代理請求人とする手続きをすでに済ませていました。そこで今回、私が証券番号や父の住所などの個人情報を電話で保険会社に伝えたところ、給付金の請求書類を送ってもらうことができました。

もっとも、父の状態は声が出ない程度で、意思確認ができないわけではありません。そのためこの保険会社では、今回のケースでは代理請求人を指定していなかったとしても、家族からの請求に対応するとのこと。一定の家族等が請求できると約款で取り決めている場合もあるので、事前に契約を確認しておくと安心です。

元気なうちに指定しておく

代理請求人に指定できるのは、被保険者と同居、または生計を一にする戸籍上の配偶者や3親等以内の親族です。内縁関係の夫婦や同性パートナー等も、保険会社によっては可能です。新たな保険料は不要。元気なうちに本人が指定しておきます。

ただし、指定代理請求人の役割は本人に代わって保険金や給付金を請求することであり、解約や受取人変更、住所変更などの手続きはできません。所定の書類を揃えれば家族が手続きできる保険会社や、あらかじめ指定した人が契約者に代わって契約に関する一定の手続きができる「契約者代理人制度」を設ける保険会社も一部ありますが、こうした対応をしていない保険会社では、原則として成年後見人が必要になります。

契約の有無を確認できる制度も

事前対策を講じないうちに本人が死亡したり、判断能力が低下したりして、保険契約の有無すらわからなくなることも考えられます。そんなときはまず、保険証券や契約確認通知を探します。銀行口座から保険料が引き落されているかを確認してもよいでしょう。

別に、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」で確認する方法もあります。これは本人が死亡した時、認知症で判断能力が低下した時、あるいは被災して死亡・行方不明になった時に、契約の有無を確認できるしくみです。

本人の死亡または認知症による判断低下で利用する際には、1回3000円(税込)の利用料と戸籍や所定の診断書等の提出が必要です。死亡では法定相続人など、認知症等では3親等内の親族などが利用できます。

また、災害で本人が死亡または行方不明となった時は、本人の家族(配偶者・親・子・兄弟姉妹)等が無料で利用できます。対象となるのは、災害救助法が適用された自治体に居住していて、住宅を失うなどした被災者です。

ただ、この制度でわかるのは、生命保険契約の有無だけなので、契約内容については契約先の生命保険会社に問い合わせて確認する必要があります。「協会の生命保険契約照会制度を利用した」旨を伝え、その後必要な手続きを進めます。

元気なうちに保険の見直しを

家族が本人に代わって手続きできるしくみはあるものの、保険契約がある限り手続き負担は続きます。また、家族のいない単身者にはこのしくみは有効ではなく、手続き自体が困難になるおそれがあります。元気なうちに、契約している保険を確認して、本当に必要かどうか改めて検討することが大事です。

すでに役割を終えたり、必要性が薄かったり、家計負担が過大だったりする保険は解約も選択肢になります。元気なうちに保険を見直しておくことも、老後対策のひとつになります。

添付ファイル
高齢者も高加入率の医療保険、年をとっても請求できる?(清水香).pdf
執筆
清水香 (しみず かおり)

(株)生活設計塾クルー取締役、ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)。 中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年(株)生活設計塾クルー取締役に就任、2019年FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表に就任。 家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV・ラジオ出演も多数。

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